ここでは、シンクライアントの基本的な仕組みや方式の違いをまとめました。またデータレスクライアントに比べ、動作が重たくパフォーマンスが落ちてしまう理由についても解説します。
シンクライアントは、データの保存やほとんどの処理をサーバー側で行い、端末側の処理を最小限に抑えるシステムのことをいいます。端末側にデータが残らないため、紛失や盗難に遭っても情報漏洩することがありません。
シンクライアントは大きく分けると、ネットワークブート型と画面転送型があります。さらに画像転送型は、仮想デスクトップ(VDI方式)、ブレードPC方式、サーバーベース方式に分けられます。
方式に違いがあってもサーバー側でほとんどの処理を行うという点は同じです。まずは、そのことをしっかり押さえておきましょう。なお、シンクライアントの実行方式の詳細については別途解説していますので、そちらを参照してください。
シンクライアントの仕組みを知れば、サーバー側に負担がかかることは容易に理解できるでしょう。動作が重たくなる理由は方式の違いも影響しますが、ここでは主流となっているVDI方式を基本に解説します。
シンクライアントでは、動作やレスポンスについては端末側の能力ではなくサーバー側に依存します。したがって、利用者が多くアクセスが集中すると、パフォーマンスが落ちてしまう原因になるのです。
VDI方式は各端末でOSやアプリケーションなどの仮想環境を再現する方式です。そのため、他の方式より端末の増減に柔軟に対応できますが、導入時に想定しなかったネットワークトラフィックの上昇が起こると動作が重たくなります。
シンクライアントの導入前に使用するアプリケーションの動作チェックを十分に行っていないこともパフォーマンス低下の要因になります。稼働後にサーバーのCPU負荷が高くなってしまい処理全体が重たくなってしまうのです。
例えば、Web会議や動画表示、画像の変換・圧縮・解凍などを伴うようなアプリケーションや処理は綿密な事前動作チェックを行わないとサーバーのスペック不足で動作に影響を与えます。業務内容によってはシンクライアントの導入自体の再検討が必要です。
VDI方式は端末で仮想化されたデスクトップ環境を利用するため、物理PCよりも処理能力が落ちます。そのため、いくつものウインドウを開いて複数のアプリケーションを同時に起動するとレスポンスが悪くなります。
特に、シンクライアント導入前に高スペックの端末を使用していた場合、パフォーマンス低下を大きく感じるでしょう。シンクライアント導入時は、そうした違いを十分に説明しておかないと利用者の不満につながるので注意が必要です。
シンクライアントは新たなネットワーク作業形態として注目されましたが、いくつかのデメリットがあります。そうしたデメリットを解消し、シンクライアントよりも低コストで同等のセキュリティを実現する仕組みとしてデータレスクライアントが生まれました。
データレスクライアントはサーバーにデータのみ保存し、処理は端末側で行うため一定のパフォーマンスを維持できます。また端末の一時領域に作業環境をダウンロードすることでオフライン状態でも作業継続が可能です。
データレスクライアントはシンクライアントの基本コンセプトを受け継ぎながら、次世代のネットワーク作業環境を実現する仕組みとして期待されています。