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シンクライアントのメリット・デメリット

目次

リモートワーク時代にセキュアな環境での業務を可能にする仕組みとして注目されるシンクライアント。ここでは、シンクライアント導入により考えられるメリットと事前に知っておきたいデメリットについてまとめました。

シンクライアントのメリット

シンクライアントを導入して得られるメリットには以下のようなものがあります。費用対効果を考える際の参考として理解しておきましょう。

情報漏洩の防止

シンクライアント導入のきっかけになりやすいのが情報漏洩の防止効果です。リモートワークの普及により社外での業務が増えると持ち出した端末の紛失や盗難等による情報漏洩リスクが高まります。

端末側での処理やデータ保存を行わず、サーバー上の仮想化デスクトップ上で作業を行うシンクライアントは端末のみでは機能しません。また、ハードディスクなどの記憶装置にデータも残らないためデータが抜き取られる心配もなくなります。

ランサムウェア対策

近年、企業を狙ったランサムウェアの被害が増加しています。警視庁の資料によれば2023年(令和5年)上半期だけで103件の被害が報告されており、前年より減少したものの高い水準のままです。

これはリモートアクセスによる脆弱性を攻撃者が狙っているためで、被害に遭うと全業務が停止してしまいます。その点、端末で処理も行わずデータも保存されないシンクライアントはランサムウェア対策として非常に有効です。

参照元:【PDF】警視庁「令和5年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について P.3」(https://www.npa.go.jp/publications/statistics/cybersecurity/data/R05_kami_cyber_jousei.pdf

場所を選ばずに利用可能

シンクライアント端末はデスクトップ型だけでなく、持ち運び可能なモバイル型やUSBデバイス型があります。そのため、サーバーにつながるネットワーク環境さえあれば場所を選ばずどこでも利用可能です。

公開ネットワークを使用せず、暗号化されたセキュアな通信環境で業務ができるためリモートワークに向いています。また災害時でもサーバーが被害なく稼働していれば、業務を継続できBCP対策としても有効です。

運用管理コストの削減

シンクライアントはデータ処理をサーバー側に集中させて一元管理する仕組みなので、端末ごとのメンテナンスを行わずに済みます。サーバーだけを管理すればよくなるため、業務削減や人件費削減が可能です。

また、ユーザーが端末に危険なアプリケーションをインストールすることもなくなるためセキュリティ上の安全も確保できます。シンクライアント導入前の端末数が多いほど、運用管理コスト削減効果は高いでしょう。

シンクライアントのデメリット

シンクライアント導入は良いことばかりがあるわけではありません。後になってこんなはずではなかったとならないよう、マイナス面もしっかりとチェックしておきましょう。

導入コストが高い

シンクライアントを利用できる環境を整備するためには、サーバー上でのデスクトップ仮想化と、そこに接続する専用端末を用意することが必要です。またシステムの規模により専用OSのライセンス料がかかります。

シンクライアントは1台当たり20~30万円の導入コストがかかるとされています。これは、従来のPCよりも高くなり、ユーザー数によっては莫大な予算を用意しないといけません。こうしたコスト高が導入を妨げる要因にもなります。

参照元:日商エレクトロニクス(https://cloud.nissho-ele.co.jp/vdiblog/vdi_runningcost/)

ネットワーク環境なしで使えない

シンクライアントは利用場所は選びませんが、ネットワーク環境が整備されていない場所では使用できません。社内ネットワーク内で使用する分には問題ありませんが、外部から使用するには通信手段を考える必要があります。

また、オフラインになった時点で使えなくなるためネットワークに障害が発生すると業務が継続できなくなります。端末側の処理を徹底的に削ぎ落とす代わりに、サーバー接続前提の仕組みがマイナスにも働きます。

ネットワークコスト・帯域の問題

シンクライアントはアプリケーションの実行やデータ保持をサーバー側でおこなうので、ユーザーの操作画面やデータがサーバーとシンクライアント間で大量に転送されます。そのため、業務開始時にシンクライアントを起動する際などアクセスが集中する時間帯はネットワーク帯域も大量に消費することとなり、通信遅延や速度低下が発生する要因となってしまいます。

ユーザー数が増えるほどに通信量も増えるため、十分な帯域幅を確保することが大切です。リモートワークや外出先からの利用が多い場合も安定したネットワーク環境が必要となりますが、回線負荷がかかると業務効率が低下する恐れもあります。通信環境の冗長化やバックアップ回線の用意などの対策が求められます。

サーバーに高負荷がかかる

端末側で行うことを最小限に抑え、サーバー側で処理を行うシンクライアントの仕組みはシステムにかかる負荷がサーバーに集中します。そのためサーバーに障害が発生しやすくなるのがデメリットです。

万が一、サーバーが完全にダウンしてしまうと業務全体に影響を与えることになるでしょう。それを回避するためにデータのバックアップ体制を強化すると運用管理コストの軽減というシンクライアントのメリットが薄れてしまう可能性も出てきます。

サーバー障害時の業務停止リスク

シンクライアントでは、サーバーで一元管理、処理するため全ユーザーの処理を集約しています。そのため、サーバー障害が発生したときはすべてのシンクライアント端末が利用できなくなってしまう恐れがあります。全端末に影響が及ぶことでデータへのアクセスができなくなったり業務プロセスが停止したりすれば、業務が停止するリスクがあるのです。各端末が独立して動作するFATクライアントよりも障害発生時の影響は大きくなります。

また、シンクライアントはサーバーに依存する構造なので、サーバが復旧するまでクライアント端末が利用できません。更に、サーバーが復旧してもシンクライアント全体の再構成が必要となるためデータ復旧に時間がかかります。サーバーの冗長化やバックアップ体制を構築することでリスクを軽減することができますが、コストや運用負荷がかかってしまいます。

FAT端末よりパフォーマンスが落ちる

シンクライアントは端末でアプリケーションは稼働せず、サーバーの仮想デスクトップ環境下で作業をおこないます。そのため、端末側で処理を行う通常のPC(FAT端末)と比べると作業パフォーマンスが多少落ちてしまいます。

特にシンクライアント導入前にハイスペックのPCを使用していた場合は、導入後に動作が重くなりストレスを感じます。事前に導入の目的や影響について十分に説明することが必要です。

アプリケーション・周辺機器の制約

シンクライアント環境ではアプリケーションや周辺機器に制約があります。アプリケーションはサーバーで実行されるので 端末側でアプリケーションをインストールできず、サーバーで動作可能なアプリケーション以外は利用することができません。

また、シンクライアントは周辺機器からのアクセスが制限できるため高いセキュリティを確保できますが、外部ドライブへの書き込み、印刷、USBメモリなどの外部ストレージなどの利用が制限される場合があります。

シンクライアントではグラフィック処理や動画編集などもサーバー側で行われます。サーバー側の負荷が高い場合に処理が遅くなり、回線が不安定になれば画像転送が遅延するなどパフォーマンスが低下してしまいます。業務内容によっては、シンクライアントよりFATクライアントの方が適している場合もあります。

柔軟性・カスタマイズ性の低下

シンクライアント端末では個人でデータの保存やアプリケーションのインストールができないので高いセキュリティを誇りますが、その一方で柔軟性が低くカスタマイズしづらいデメリットがあります。現場ごとの設定変更や、現場独自のツールやスクリプトなど、個別でカスタマイズが求められるような環境には適していません。

シンクライアント環境ではソフトウェアが集中管理されて業務が効率化できる一方で、利用できるアプリケーションが制限される、個々のニーズに対応できないなど現場ごとで工夫して活用することが難しいケースもあります。

将来性・技術進化への追従コスト

近年では、パソコンやモバイルデバイスの価格低下や性能向上でシンクライアントのコスト恩恵が少なくなっています。また、クラウドコンピューティングやVDIの進化によってシンクライアントよりも柔軟性や拡張性でメリットがある技術が普及しています。シンクライアントもシステムのリプレイスやアップグレードを求められることもあるでしょう。シンクライアントを導入後でも追加投資が求められたり数年で他に技術的に優れたものが登場したりするリスクがあることを把握しておく必要があります。

業務継続性と運用負荷

シンクライアントを運用するためには、サーバーやネットワーク障害対策やネットワーク帯域の管理、アプリケーションの互換性確保などが求められます。障害が生じてしまうとすべての業務が停止するリスクもあるため、対応体制の構築も欠かせません。専任チームを設けたり既存チームが兼務したり、システム部門の運用負荷がかかるなど業務負担が増える恐れがあります。専門的な知識やスキルを持つIT人材が社内にいない場合は外部委託を検討する必要があります。

シンクライアントの導入や運用にはコスト面のメリットだけを見るのではなく、業務の継続性や運用負荷、将来性や柔軟性などデメリットとその対策も十分に考慮して検討する必要があります。

時代はシンクライアントからデータレスクライアントへ

シンクライアントは新たなネットワーク作業形態として注目されましたが、いくつかのデメリットがあります。そうしたデメリットを解消し、シンクライアントよりも低コストで同等のセキュリティを実現する仕組みとしてデータレスクライアントが生まれました。

データレスクライアントはサーバーにデータのみ保存し、処理は端末側で行うため一定のパフォーマンスを維持できます。また端末の一時領域に作業環境をダウンロードすることでオフライン状態でも作業継続が可能です。

データレスクライアントはシンクライアントの基本コンセプトを受け継ぎながら、次世代のネットワーク作業環境を実現する仕組みとして期待されています。