テレワークや外出先での業務が当たり前になった今、PCの持ち出しに伴う情報漏洩リスクと、VDIの高コスト・複雑な運用に悩む企業は少なくありません。そこで注目されているのが、端末にデータを残さず、安全性と使いやすさを両立する「データレスクライアント」です。この記事では、その仕組みや運用コストの目安、VDIからの乗り換え事例、導入時のポイントまでを整理し、次世代のセキュアな業務環境づくりのヒントを紹介します。
データレスクライアントは、端末に業務データを保存しない仕組みにより、PC紛失・盗難時でも情報漏洩リスクを実質ゼロに抑えるセキュリティ対策の中核です。端末には一時領域のみを利用し、電源断や一定時間未接続時には自動的にデータを消去する機能を標準搭載します。従来のVDIと異なり、専用サーバーや高価な基盤が不要で、オフライン環境でも利用できるので、在宅勤務や出張先でも柔軟な業務を継続できます。コスト削減と運用負荷軽減を両立するとともに、高い情報セキュリティも確保できます。
| 項目 | データレスクライアント | VDI |
|---|---|---|
| コスト | 低(PC活用) | 高(サーバー) |
| オフライン | 可 | 不可 |
| 導入期間 | 1週間 | 数ヶ月 |
データレスクライアントの運用コストは、VDIと比べてシンプルで低廉な傾向にあります。一般的に初期費用は比較的低額に抑えられるケースが多く、ライセンスのみで導入できる例もあります。またサーバーや大規模インフラを必要としないので、導入・運用負荷が軽く、コスト効果が高い仕組みです。VDIではサーバー・ストレージ・ネットワーク機器やソフトウェアのライセンス費用がかさむ点が指摘されています。
運用コストの月額としては、ライセンス費用は多くの事例で数百円〜1,000円未満程度です。一方で、高機能なサービスでは月額2,000円前後の価格例もあります。
以下の表は、公開されている価格例をもとに、一般的なVDI構成と比較した編集部による試算です。
| 項目 | 目安(1人/月) | VDI比※ |
|---|---|---|
| ライセンス | 500〜2,000円 | 1/5 |
| ストレージ | 100〜500円 | 1/3 |
| 合計 | 1,000〜3,000円 | 80%減 |
※VDI比は、VDIに必要なサーバー・インフラ・保守費用を含めた一般的な構成と比較した編集部試算の目安
参照元:ASPIC公式サービスアスピック( https://www.aspicjapan.org/asu/article/28113)
参照元:NEC( https://jpn.nec.com/sme/filesync/index.html)
VDIは高いセキュリティを確保できる一方で、コストや運用負荷、ネットワーク依存といった課題を抱えがちです。ここでは、それらの課題からデータレスクライアントへ乗り換えた3つの事例を紹介し、どのように課題を解決し、業務環境がどう改善されたのかを具体的に見ていきます。
e-Janネットワークスでは、従来リモートデスクトップやVDIで約70台分のPC環境を運用していましたが、シェアオフィス移転に際して接続先PCの設置スペース確保やVDIの費用・操作性に課題がありました。そこで、AD連携機能を持つデータレスクライアントを導入し、社内外において同一PCで業務できる環境を構築しました。約70名分の環境がデータレス化され、接続先PC置き場の撤去やVDIリプレース不要による約400万円のコスト削減ができました。
参照元:CACHATTO( https://www.cachatto.jp/case/detail/e-jan.html)
PE-BANKは数年前からVDIを導入していましたが、社外ではネットワーク環境が不安定で業務に支障が出ることや、サーバーの導入・保守にかかるコストが課題でした。そこでOffice 365導入を契機にデータレスクライアント方式を採用し、社内PC環境を刷新しました。VDIと同等のセキュリティを維持しながら、社外でもオフライン利用でき、サーバー関連の運用負荷とコストを削減しました。
参照元:ZDNET( https://japan.zdnet.com/paper/20167394/30001786/)
一時期注目を集めたVDIでしたが、高額なサーバー・ストレージ・ライセンス費用や複雑な運用管理、ネットワーク依存によるユーザー体験低下などの課題に直面する企業が増えてきました。そこでこのVDIをデータレスクライアントに置き換え、セキュアなリモートワーク環境を実現する方法が注目されてきています。ファイルを開く際に一時的にPCにデータをダウンロードし、ファイルを閉じた後にデータを消去する「リダイレクト方式」を採用したデータレスクライアントを導入し、セキュアな環境と同時に、Web会議システムのような負荷の高い処理でも快適に実行できるようになります。また、導入コストを抑制できます。
参照元:Flex Work Place( https://www.yrl.com/fwp/column/data-less-client.html)
データレスクライアント導入はシンプルな3ステップで進められます。まずクライアントPCへソフトをインストールし、保存先や自動消去などのポリシーを設定、最後に実運用を想定したテストを行えば、最短1日で利用が開始できます。
ストレージはオンプレにこだわらず、クラウドと併用することで容量とコストの最適化を図ることができます。初期はトラブル対応を迅速に行えるサポート込みプランを選ぶと安心です。また、VDIより通信量は少なくても動作しますが、業務内容によっては帯域不足がボトルネックになるので、事前にネットワーク環境を確認しておくことが重要です。
データレスクライアントは、端末にデータを残さず紛失時の情報漏洩リスクを抑えつつ、VDIより低コストで運用できる仕組みです。月額はライセンス数百円〜千円台が中心で、サーバー不要によりインフラ費用も削減できます。導入はインストール、設定、テストの3ステップで最短1日で終わります。クラウド併用でストレージ費を最適化し、サポート付きプランを選ぶと安心です。VDIからの乗り換えることで、ネットワーク依存や高コストといった課題を解消し、オフライン利用や運用負荷を軽減できます。